「Tout le Monde,Debout」(2018)仏。 ふと知り合った女性の気を引くためにあくまでなりゆきで車椅子を使用する身体であるという嘘をつき続けなければならなかった主人公が、その女性の姉である車椅子生活を送る知的で快活な美女と知り合い恋に落ちていくハッピーエンドのラブストーリー。デートを重ねたパリやプラハの美しい背景にもワクワク。主人公の家にパイパー・エドシック(このシーン、とても気になってこれにも目を凝らして何の銘柄か見極めました笑)を手に訪ねていく場面での彼女の表情から伝わるドキドキ感、彼の嘘に気づいていながらこの恋をできる限り楽しみたかったという女心、夢のような仕掛けのプールに2人でゆっくり沈んでいく時間、マラソン大会で彼を助けて車椅子ゴールした直後の2人の弾け方(和解)、姉妹の大人女子トーク……等、惹かれる瞬間がたくさん! 恋に、いえ、あらゆる人間的なコミュニケーションにおいて障害となる壁の存在はお互いを常に大切に思う気持ちがありさえすれば越えられないものはないのではないか、と感じました。
仏映画「Les grands esprits」(「心の広い人」?)はベテラン教師がパリ郊外の問題がある中学校に1年間派遣され生徒にも先生方にも父兄にも良い影響を与えて学校を改革するお話。最も反抗的だった生徒が立ち直り、自らの将来像を希望を持って良く描き、結果、素直に勉強に取り組んでいこうとするに至るまでの過程は強く心に響くものがありました。そんな、人生に立ち向かっていく成長した姿、またクラスメイトで心と声を合わせて全体合唱発表会が実行できるに至ったこと、最後に任期を終えて帰る教師と問題のあった生徒との間に「心が通う」以上の、人間対人間の、温かで情感溢れる心の交わりを感じる会話にはジンワリ泣けてきます。ベテラン教師のほうもこの学校の生徒から教わることも多くありました。アナグラムのやる気の喪失で本当にできるものもできなくなっていくことを生徒にも投げかけたところは特に印象的で、失敗が意欲を削いでいく例(学習性無力感)、教師が生徒を信じた結果学力が上がってくる場面では優秀な教師でも「できない」と言われる生徒たちから学ぶことが確かにありました。自分は何をすべきか?突破口はどこにあるのか?深く自らに問いかけ実際に生徒に全身でぶつかっていく日々の尊さは光り輝いていて心動かされました! 大切なものを得ていく教師の表情はじめ、ずっと忘れられない画が本日の添付写真の他にも幾つも存在する作品。ちなみに、今月のDAYSヘミングウェイ月間内(笑)の立ち位置としてはさりげなく、最も手がかかった生徒が小説調べの発表会で選んだのがヘミングウェイの超短編、6語小説だったのでした。皆が想像力を膨らませて考える機会を与えたということでその子は良い評価をもらいます(^^)。