今年一番の暑さのなか帰宅後、家事をしながら、軽快アンニュイな「9月の雨」(マイケル・ファインスタイン、ジョージ・シアリング)をヘレン・メリルの声で聴いていました。これは歌詞にThough spring is here,とあるように春のなか、夏の終わりの雨とその時確かにあった恋を想う曲。春の雨にあいながら秋の雨の恋人の囁き声を聴くのです。「終わっているのは重々承知だけれど好きなうちはまだ貴方は恋人」的な、陽気な未練⁉︎がちょっと魅力的です(笑)。それで思い出したのはムスタキが、ボサノヴァの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビン「3月の水」をフランス語に訳した時フランスにおいての3月に合わせて歌詞を「溶ける雪」など冬の終わりにしてしまったこと。原曲のアントニオ・カルロス・ジョビンが夏の終わりのブラジルの諸々を編み込んだ感覚をムスタキは冬の終わりにしたということなのです。雨、ではなく雪溶け水⁉︎ 確か、ムスタキによる「溶ける氷」後「Ce sont les eaux de Mars,la promesse de vie」(3月の水、命の約束)と……。私には昔ここが印象的でした。……思いがけず南半球に、そしてそれより遠い昔のことに、想いが翔んでいく今夕です。